つよがり

夢を見たんだ 手作りした夕食を 仲良しになってくれたヒト達と囲んで おしゃべりしながら おいしいねって 食べてる それから 手放してしまったはずの グランドピアノを 弾いて ヴァイオリンや ギターや ウクレレの音を合わせたり 歌を歌ったり お揃いの ジュ…

4月7日

カーテン越しでも 日差しの強さを感じる "もう"じゃなくて "本当に" 春なんだね 今日 退院する"かなで"は わたしの病室を訪ねてくれた はじめて 自分の腕で 奏音を抱っこした この子の温もりや匂い なんて幸せなんだろう そして ほんの少し 寂しい気持ちにな…

奏音

"昼と夜の長さか等しくなる日" 2024年の"その日"に あなたはうまれたんだ そして さっそく プレゼントをくれたの わたしを "おばちゃん"にするという わたしにしか受け取れない プレゼントを あなたがうまれる前の日 "北の街"は 冬将軍の 悪あがきのような吹…

あなたの中のあなた

デブラ・フレイジャーさんの 「あなたがうまれたひ」という絵本を 近所の本屋さんで見つけたのは 14歳の秋だった その頃のわたしといえば "いい子ぶった変わり者"と 聞こえるように 嫌味を言われるほど 周りと馴染まない子だった クラスの中で形成される ガ…

桜の葉

小さな鏡もちが 飾ってあった場所には かわいい お内裏さまとお雛さまが 座っている 微かに "ひな祭り"の歌が流れ 寒々しい病棟も ほんの少しだけ ぬくもる気がする 3月だというのに 札幌は雪景色に戻った ベッドから見える 小さな空からも その様子が想像で…

チョコレート

札幌の雪まつりが終わる日に 久しぶりの家に戻る 毎年 わたしの職場や おとうさんの会社で働く方々に チョコを手作りして 配っていて おとうさんにも "ついで"を口実に 渡していた あちこちから もらっているのに 満面の笑顔で 喜んでくれる 勿体ないからっ…

Les feuilles mortes

あなたが どうして この名前にしたのか とても気になっている でも わたしは好きだよ どうして この名前にしたのか わからないけど わかる気がするんだ "わたしたち似てるね" あなたにそう言われたとき ドキドキした わたしも そう思っていたから 今も そう…

1月14日

生きているって 奇跡なんだよ 離したくないって 必死に握りしめていても 否応もなく 手のひらからすり抜けて 無くなってしまう そんな不安定なモノを 抱えているのに 毎日の普通が 当たり前に続くと思っていて 失いそうな時 失ってしまいそうな時 やっと気づ…

12月30日

わたしがいるフロアも 新年を迎える準備をしている ナースステーションのカウンターに 供えられた小さな鏡餅が 妙に呑気で かわいい 少し前までは クリスマスツリーを飾っていたロビーも こざっぱりしたと おとうさんが言う 午前の外来で 本年の診察も終わり…

12月16日

最近 幼い頃の夢をよく見る どこかはわからないのに 何となく 懐かしい場所で かなでとふたりで かわいいシールと キャンディーの包紙を 交換したり きれいな おはじきやビー玉を 分け合い 遊んでいる 目が覚めると いつもの 無機質な天井が見えて なんだか …

11月22日

おかあさんから 手紙が来た カフェでの事を 謝る内容だった でも わたしの中に 入ってこない 意味は解るのだけれど まるで 文字が 記号のようで パラパラと 便箋から 溢れてゆき 真っ白になっていくみたいだ バースデーで 一時帰宅して以来 できるだけ 独り…

11月4日

自分で希望した 一時帰宅の日を迎えた 火曜日に入れた ペースメーカーは 思いのほか 良い仕事をしてくれていて 心臓の働きを 底上げしてくれる でも ドクターからは 午前の回診で 釘を刺された 少し前から 体調の良い日は 少しずつ お手紙を書いている 直接…

10月27日

今日から月曜まで 一時帰宅していいと ドクターに言われた わたしがお願いしたのは 再来週なのに どうやら おとうさんから 申し入れがあったらしい 前回の一時帰宅の後の事もあるから 再来週だって難しいと思っていたので すごくうれしかった タクシーで帰る…

10月22日

窓から見える山には 白いものが見える 歩く人波の装いでも 季節の変わり目が 早まっているのがわかる 秋から冬へ 時間はとうとうと流れる あんまり 何度も聞くから ドクターも 再来週 一時帰宅を許してくれた あんなコトに なったばかりなのにと 少し呆れた…

10月20日

目が覚めると ベッドのランプが点いていて ソファに かなでが横になっているから 風邪をひいたら かわいそうだから 声を掛けた すごい勢いで身体を起こし "みおちゃん?みおちゃん?"って 言いながら ナースコールを鳴らす あっという間に ドクターがやってき…

10月10日

昨日の夕方 わたしは 病室に戻った ベリーが 玄関に座り こちらを見ている姿が 哀しかった また 帰れるのかな 帰りたいな 夜 泣いても 気づかれないから 安心する 今日は 午前中に 診察を受ける もう4割くらいしか 動いていない 胸の時計は 予定通りであるこ…

10月8日

昨夜は 自分のベッドで休んだ 帰宅してから ベリーは なかなか近づかなかったけど 寝る頃になって ベッドに上がってきた 柔らかい身体をなでる 喉の音が心地よい シッポを 手に軽く巻きつけてくる お薬のせいもあって 眠りに落ちるのは あっという間だった …

10月7日

今日は一時帰宅になった だから これからは コレを 日記代わりに しようと思う わたしのせいで かなでは 妊婦なのに 朝から忙しない だけど お腹の子の為に 少しは静かにして欲しい わたしの世話の為に この子に 障るようなコトがあれば 死んでも 死にきれな…

ルーベンス⑤

わたしは ボルドーの毛糸で マフラーを編み チョコチップの いっぱい入った クッキーを焼いて ベタだけど それくらいしか 思い当たらなくて クリスマスカードを しのばせて ラッピングした そして 終業式の日に 彼に渡したんだ その時の 彼の笑顔が 不安なキ…

ルーベンス④

わたしの変化に 最初に気づいたのは いもうとだった 今にも誰かに 話してしまいそうだから 必死に口止めした "彼氏"ができてから 苦手なものが減っていった 例えば 駅前やバスの車内とか 人混みが苦手だったけど 彼と一緒だと 平気になった 以前だと そうい…

ルーベンス③

普通って何? いろんな本を読んだけど 解るのは 言葉の意味だけ あるいは 漠然とした 概要 それでも 普通という言葉に 憧れている わたしも 普通だったら おかあさんに 愛してもらえたのかな わからないけど 頑固なわたしに 毎日、毎日 懲りずに話しかけて 1…

ルーベンス②

家でも学校でも ひとりで過ごす事が 普通だった たまに声を出すと 周りから驚かれた 「すまして お高くとまってる」って 嫌味を言われることもある 「あの子 口がきけないみたいよ」って 変なウワサもされたりした そんな周りと 仲良くするより ひとりの方が…

ルーベンス①

神様はイジワルだ 小さい頃から 身体が弱かったわたしは 布団の中で そんなコトを 考えていた かけっこしたり 縄跳びしたり プールで遊んだり 周りの子が 当たり前にできることを "胸が苦しくなるから" 出来なくて 対照的に 夏の陽の下 友達と駆け廻り 真っ…

言の葉結び①「伝えたいコト」

あんなに遠くから海の波は伝わってくるのに わたしたちは近くにいても心を伝えるコトがいつまでもへたっぴで あとでたくさん後悔するね 疑うコトは簡単に覚えたのに信じるコトは難しくて 自分にある臆病に操られてそんな自分のコトが嫌いになる でもね あな…

大切にする④

ただ "自分を信じる"コトが なにより むずかしい 周りから "すごいね" "えらいね" と言われても 素直に 受け入れるコトが できなかった いちばん身近なオトナが それを許さない そうして いつからか 挑戦より 無難を選ぶように なっていた 時間は有限なのに …

大切にする③

周りと異質であるコトを 多くのヒトは恐れる 異質であるにも 理由は様々だけど 世界はそれを いくつかのカテゴリーに 分けながらも それぞれを反目し もしくは同調しながら 個性だと主張している 学生なんだから 子どものくせに 女の子なんだからと 区別をつ…

大切にする②

その器を眺めるたびに アンティークショップに 連れて行ってもらうのが 楽しみだった 幼い頃を思い出してしまう 磁器の 寒色を帯びる白より ボーンチャイナの 乳白色が好き 透明感と艶感が 一層感じられるし 硬質なのに 柔らかさを感じる 北の街に住んでから…

大切にする①

1915年 高祖母が生まれた時の 記念に購入された トリオのティーカップを 2015年 祖母はわたしの誕生日に プレゼントしてくれた コレクションボードに飾られていた WEDGWOOD オールド・ノリタケ Royal Copenhagen 美しい器たちに 憧れていたわたしは その中の…

ミルク味の雪②

頑張っても 褒めてもらえないのは わたしが悪い子だから 期待に応えられず 怒らせるのは わたしが悪い子だから イライラさせて 手をあげさせるのは わたしが悪い子だから ずっと そう思っていた だから あの子の身の上を聞いたとき わたしと同じような気がし…

ミルク味の雪①

雪花氷(シェホワビン)は 台湾のかき氷 純氷を使う かき氷とは違い 甘いミルク味の 氷を使うのが一般的 イチゴとかマンゴーとか フルーツを ふんだんに盛り合わせ 時には チョコなどの ソースをアクセントにかける 氷片がフレークというより もっと繊細で ま…