7月30日

1週間ほど前から

わたしのカラダから

わたしが抜けていくような感覚になる

 

おばあちゃまの夢を見た

穏やかで優しい

あまりにハッキリしていて

夢じゃないみたい

 

そうか

わたしのカラダに紐付けられた時間は

そろそろ尽きようとしてるからか

 

今日

弁護士に会う

 

あの日から

ずっと考えていたんだ

 

おかあさんに言われたコトより

おかあさんに言ったコトの方が

はるかにわたし自身を

傷つけるものだった

 

事情を聴いてくれたヒトは

わたしは悪い子じゃないって

慰めてくれた

湧き上がる罪悪感を

薄めてくれた

 

だけど

やっぱり違うよ

わたし

悪い子だ

 

28にもなって

おかあさんに何ひとつ

親孝行してないんだ

 

わたしが生まれてから

ずっと

きっとずっと

苦しかったんだろうなって思うから

 

だから

せめて欲しいもの

あげようって思う

 

奏音に譲ろうと思っていたけど

おかあさんにあげよう

 

おとうさんや奏は

怒るかな

 

怒らないよねきっと

 

ふたりを愛しているのと

同じくらい

 

わたしは

おかあさんも愛してるんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

種子

"あなたは悲しみを産む種子だ"

 

もう

逢うことはないと思っていた

おかあさんからの言葉は

重要なコトに気づかせた

いわば真理だった

 

ホントに欲していたコトは

ずっと避けていたコトだと

気付かされた

この3年余りの日々は

離し難い

カラフルなモノで

 

"夢"の世界にいる

ステキなヒト達は

会ったことがないにも関わらず

身体に紐付けられた時間が

尽きようしているわたしに

ココロを砕き

たくさんの"愛情"と"励まし"

そして

"慰め"をくれた

 

ホントにうれしかった

 

だけど

わたしが居なくなるコトが

なかよしなそのヒト達を

悲しませるとは

考えたことがなかった

 

"あなたを不憫に思うあまり

 情をかけてくれる"お人好し"が

 少なからずいるとして

 その人にとって

 あなたが死ぬコトは

 悲しいコトなんでしょうから"

 

"知り合わなければ

 しなくてもよい悲しみを

 あなたの気まぐれで

 その機会がうまれ

 原因を作った"

 

"いや

 実のところ誰も何も

 思ってないかもしれないから

 だとしたら

 あなたは滑稽だ"

 

何も言えなかった

 

その後も

おかあさんの声が続いたけど

耳に入らなかった

 

ずっと天井を見ていた

 

そして

呪いのように続く言葉を遮り

聞いてみた

 

"おかあさん

 ずっと聞きたかったコト

 聞いていい?"

 

"わたしのこと

 ずっと嫌いだったよね

 ずっと目障りだったよね"

 

呪いの言葉は途切れた

 

"わたしは悲しみの種子

 おかあさんの言うとおりだ"

 

少しの沈黙の後

かなでが病室に来たタイミングで

おかあさんは身支度した

 

"なんでここにいるの?

 もう来ないでよ

 みおちゃん大丈夫?"

 

かなでの言葉と態度に

わからない言い訳をして

取り繕い

病室を出て行った

 

わたしは

このふたりの関係も

悪くしているのかも

 

この後

笑顔でいる自信がないから

この思いを薄めるために

Twitterにつぶやいたけど

なんだか疲れてしまった

 

眠る時間だけが

わたしの居場所なのかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"ありがとう"と"大好き"

起きてる時間が

益々短くなった

 

発作を起こして

意識が落ちてるのか

 

ただ

眠りに落ちているのか

 

よくわからないくらい

起きていられない

 

目が覚めたら

お手洗いに行かなくても

大丈夫にされていた

 

身体を動かすのが

ダルくてツラい

 

ただ

そんな中でも

かなでは

わたしの身体を拭いてくれ

おとうさんは

髪を洗ってくれている

 

前回

更新してすぐに

大きな発作が起きて

4日ほど

ICUにいた時を除いて

 

かなでは

"みおちゃんはこういう事

 絶対気にするから"と

眠ってるときでも

身を清めてくれていた

 

わたしを

こういうカタチで

守ってくれる

このふたりに救われている

 

"大好きだよ"と伝えると

とても照ている

 

わたしのカラダに

紐付けられた時間を告知したドクターが

回診で来た時

 

"あなたには感服する"と

 

身体に繋がる機器を見ながら

つぶやいた

 

"降参ですか?

 しぶといでしょう?わたし"

 

と答えると

あの時と同じように

苦笑いした

 

ドクターが病室を後にするとき

"ありがとうございます"と伝えると

先程とは違う

優しい目をして

小さく頭を下げて行った

 

"夢の世界"で知り合った

なかよしさんも

"現の世界"を様々に悩み

日々を過ごしているのに

 

ツイートやDM

ほんの少しだけど

配信枠に行ったわたしを

迎えてくれ

気遣ってくれる

 

その優しさに触れるたび

あんなに

独りでいようとしていた

自分の愚かさを痛感する

 

救われているコトを

"ありがとう"と

"大好き"に変えて

時間が許すまで伝えたい

 

カレンダーに目をやると

もう7月も半ばとなり

北海道も夏を迎える

 

夕方

ニセコでの打ち合わせを終え

その足で

会いに来てくれたおとうさんは

おみやげにミニトマトを持ってきた

 

ちょうど

起きていたので

ひと粒

口にした

 

ミニトマト

クセの強い青い香りと甘さが

わたしに"夏"を連れてきた

 

いつ

永い眠りについても良いように

起きているときに

わたしにできる

精一杯の"ありがとう"を伝えよう

"大好き"と伝えよう

 

きっとまた照れるんだろうけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月7日

かなでが

少し遅い

1か月検診で来院し

病室にも顔を出してくれた

 

わたしの部屋は

母子の部屋となっているらしく

勝手に使ってごめんねって

謝られたけど

むしろ

うれしかった

 

「部屋の片付けられ方が

    徹底していて

 みおちゃんらしい」

 

と言われ

つい笑ってしまう

 

今のわたしを想定して

お部屋を整理してきたんだから

思惑通り

"しめしめだ"

 

お仕事のお休みに合わせて

かなでの旦那さんも

おウチに来る

 

その時は

わたしのお部屋で

家族3人の時間を過ごすらしい

 

そんな様子を聴き

もっとうれしくなった

 

スマホの画面に

通知が溜まっていて

また新たに

お知らせが届いた

 

久しぶりの名前が

目に留まった

 

そのヒトをわたしは

この"世界"の中で

"お姉ちゃん"と呼んで

慕っている

 

傷つくことに慣れてしまい

ホントは笑っちゃいけない

ツラかったコトを

笑って話す

 

堕ちそうな

ギリギリのところでも

強がったり

 

苦しいとき

苦しいって言えない

 

不器用で

でも

希望を捨てきれないヒト

 

わたしは

そんな

"お姉ちゃん"が大好きだ

 

まじめすぎるコトを

"愚か"だと言うヒトもいるけど

そういう意味で

"不器用"なコトは

カッコイイコトだと思う

 

だから

わたしのコトを

"妹"だって呼んでくれるのが

うれしかったし

 

わたしも

"お姉ちゃん"の

何かで

お役に立ちたかった

 

結局

大した事は

てきずじまいだけど

 

そんなお姉ちゃんの

入籍の報告は

ステキなギフトになった

 

これでまたひとつ

心残りが消えた

 

このブログの中に記した

"ミルク味のかき氷"みたいな女の子も

一緒に歩いて行けるヒトを見つけ

その身に

新たな生命を宿している

 

本当に良かった

 

これからは

独りじゃないね

 

きっと

大丈夫だね

 

またひとつ

心残りが消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月2日

「先生はヤブ決定だね」

 

そう言うと

「バレましたね 

 内緒にしてください」と

優しく笑った

 

気温22℃

この時期の札幌に

らしくない暖かさも

地球温暖化のせいなのかな

 

「今度はライラック

    試してみる?」

 

と言ってみたけど

 

目を細めただけで

次の回診先に

行ってしまった

 

その“静けさ"が

本当は怖かった

 

数字は嘘をつかないから

 

あんなに

心に決めていたのに

わたしの弱虫が

覚悟を蝕みはじめてる

 

いつもの点滴が終わる頃

ナースが「離職票」を持ってきた

 

わたしが居た場所が

少しずつ

霞んで

薄れて

見えなくなる

そんな気がした

 

お昼頃

久しぶりに

歳上の配信者さんの枠を覗く

 

「特別扱いしないよ」のひと言が

堕ちそうなわたしの手を

「ギュッ」と掴む

そうだ

これは「わたしらしくない」

 

そう思うタイミングで

おとうさんが病室に入ってきた

今日は

髪を洗ってくれる日だ

 

いつものように支度して

ドレッサーまで

専用の車椅子で連れて行ってくれる

 

「洗い方、上手くなったね」

 

そう言うと

おとうさんは目を細めた

 

いつもは

いろんなことを話してくれるのに

静かな時間だった

 

トリートメントした後

タオルドライして

ドライヤーで乾かし

ブラシで髪を解いてくれた

 

その空気に合わせて

わたしも

口を閉じ

カーテンから透ける陽の光を

静かに見ていた

 

少しして

おとうさんはわたしの頭を撫でて

こう言ったんだ

 

「もう おウチに帰ろうか みお」

 

唐突さに

ボーっとしてしまったけど

わたしは

笑って言った

 

「何言ってるの

 わたし ここに居なきゃ」

 

きっと

この時のおとうさんの顔

わたし

忘れないと思うよ

 

ねぇ

おとうさん

 

わたしは

どんな顔してましたか?

 

ちゃんと

笑ってましたか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つよがり

夢を見たんだ

 

手作りした夕食を

仲良しになってくれたヒト達と囲んで

おしゃべりしながら

おいしいねって

食べてる

 

それから

 

手放してしまったはずの

グランドピアノを

弾いて

 

ヴァイオリンや

ギターや

ウクレレの音を合わせたり

 

歌を歌ったり

 

お揃いの

ジュエリーや

お洋服を着たり

 

絵を観たり

描いたり

 

お気に入りの

ティーカップ

お茶をしたり

 

大切な本や映画について

話したり

 

楽しい夢だった

 

目を覚ますと

 

窓に当たる雨粒の

空の鈍色を

一層滲ませた様子が

 

現実と真実に

わたしを引き戻す

 

もう充分泣いた

もう泣きたくないな

 

でもさ

人前で

 

特に

おとうさんの前では

絶対泣きたくないから

 

ひとりの時は

泣いてもいいよね?

 

今日は午後から

おとうさんが来て

髪を洗ってくれる

 

2日に1度は

ナースさんが

身体を拭いてくれる

 

回診のドクターには

意地悪を言う

 

泣かないわたしは

きっと

みんなの中のわたしだもの

 

最後まで

つよがりで

意地っ張りな

わたしでいたいから

 

ほんの少しだけだから

泣いていいよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月7日

カーテン越しでも

日差しの強さを感じる

 

"もう"じゃなくて

"本当に"

春なんだね

 

今日

退院する"かなで"は

わたしの病室を訪ねてくれた

 

はじめて

自分の腕で

奏音を抱っこした

 

この子の温もりや匂い

なんて幸せなんだろう

 

そして

ほんの少し

寂しい気持ちになる

 

かなでが病室を出てすぐに

ドクターの回診

 

「今年の"さくら"を

    意地でも見て

    先生の診断を覆してやる」と

 

意地悪をしてみる

 

『ボクはヤブ医者だからね』と

話を合わせてくださるドクターに

ココロの中で感謝した

 

昼下がり

 

出会った頃

柑橘類の名前だったあの子が

ずっと

苦しんでいたコトを

DMで打ち明けてくれた

 

わたしたちは

どんなに賢明に生きようとしても

道を間違えるし

人を傷つける

 

そのコトに慣れず

後悔し

自身を戒めるヒトと

仲良しになれて

良かったと思う

 

夕方

 

先日

おとうさんが

職場のデスクとロッカーを

整理に行った際

 

借りていた膝掛けを

返しそびれたと

同じ部署の子が

届けに来てくれた

 

DIORの紙袋に入ったそれを

渡そうとするその子は

目にいっぱい

涙を留めている

 

"メイク落ちちゃうよ?"って

笑いかけたら

あっという間に

洪水になった

 

わたしの膝の上に顔を沈め

声を殺すこの子に

これまで

ずいぶん手を焼いたなぁと

思いながら

 

泣き止むまで頭を撫でた

 

"こんなときに

  何てお話しすれば良いか"と

 

泣き腫らした目元でモジモジ言うから

つい笑ってしまった

 

それはそうだよ

 

わたしだって

あなたの立場だったら

なんて言っていいか悩む

 

それ以前に

借りたものは

とっとと返してる

 

そう思うと

余計に面白くなってしまった

 

わたしの笑うのを

バツ悪そうにしている

この子に

 

"良かったら

 この膝掛けを

 もらってくれない?"と

紙袋を渡してみる

 

"形見にします"って言われた時

ストレート過ぎて

妙に清々しく思った

 

変に慰められるより

ずっといい

 

メイクが落ち

まぶたが腫れるこの子に

早くおウチに帰られるよう

タクシーチケットを渡し

 

"今日はありがとう

でも

もう来ちゃダメだよ"

 

と言って

病室から送り出した