奏音

"昼と夜の長さか等しくなる日"

 

2024年の"その日"に

あなたはうまれたんだ

 

そして

さっそく

プレゼントをくれたの

 

わたしを

"おばちゃん"にするという

 

わたしにしか受け取れない

プレゼントを

 

あなたがうまれる前の日

 

"北の街"は

冬将軍の

悪あがきのような吹雪で

春が遠のいたかのように

見えたものだから

 

あなたのおかあさんは

大きなお腹を抱えて

"いっぱいいっぱい"な顔で

わたしに会いにきた

 

どんな顔かって言うとね

 

宿題が間に合わなくなりそうで

今にも泣き出しそうな

困った顔

 

つい笑ってしまったの

幼いころを思い出してね

 

それで

少し怒らせてしまった

 

でも

すぐにふたりして

 

"なんだか可笑しいね"って

笑い合ったのよ

 

安心したのか

 

来た時とは正反対に

穏やかな表情になって

 

あなたが

この世にうまれる準備をしに

おウチに帰った

 

CHANELの"Chance"が

ほのかに芳る

わたしのハンカチを手にして

 

この香りがすると

わたしが一緒に居るみたいで

落ち着くんだって

 

少しだけ

臆病なところがあるの

 

でもね

いざとなったら

すごく

勇敢ヒトなのよ

 

だって

わたしに

意地悪をするヒト達や

恐ろしい

野良犬を追い散らすんだもの

 

あなたがうまれる

その日

 

きのうとは

打って変わって

 

穏やかで

暖かな日だった

 

あなたの

おじいちゃまは

 

あなたの

おとうさんより

 

ずっと

ソワソワしていた

 

同じ病院の

棟違い

わたしがいる個室で

 

ずっと

ウロウロしていた

 

わたしを心配して

離れようとしないけど

 

あなたと

あなたのおかあさんのコトも

心配で

すごくそばに行きたかったんだと思う

 

だから

 

'わたしの代わりに迎えに行って"って

お願いしたんだ

 

だって

あなたに会いたくて

 

ホントは

わたしも行きたかったんだもの

 

あなたに会うために

胸にある

"時計の針"が止まらないように

 

わたしも

がんばったんだよ

 

"午前9時20分にうまれました"

 

仲良くしてくれた

ナースから聞いた時は

どんなに

うれしかったか

 

おかあさんは

それまで

誰にも

ずっと

教えてなかった

あなたのお名前を

 

うまれてすぐに

呼んだんだって

 

"奏音"って

 

わたしと

あなたのおかあさんの名前は

ひいおじいちゃまから

つけていただいたのだけれど

 

それは

うまれて初めていただいた

"お手紙"のような

 

願いと祈りが込められた

"贈り物"

 

あなたのお名前も

 

わたしたち

ふたりの名前から

 

ひと文字ずつ取り

結び合わせるコトで

 

"ふたり分"の

"願い"と"祈り"と"愛"を

 

おかあさんは

"初めてのお手紙"として

贈ったんだよ

 

"昼と夜の長さか等しくなる日"

 

実は

"昼"の方が少しだけ長い"日"だから

 

この先の

あなたの人生は

happyもunhappyも

"等しく"あるのではなく

 

きっと

"明るくて"

"暖かい"コトの方が多いって

 

わたしは確信しているの

 

どうか

ずっとずっと

健やかでありますように

 

親愛なる"わたしの姪"

奏音へ

 

愛を込めて