おかあさんから
手紙が来た
カフェでの事を
謝る内容だった
でも
わたしの中に
入ってこない
意味は解るのだけれど
まるで
文字が
記号のようで
パラパラと
便箋から
溢れてゆき
真っ白になっていくみたいだ
バースデーで
一時帰宅して以来
できるだけ
独りにして欲しいと
わがままを言った
かなでは
理由を聴こうとする
でも
おとうさんは理解してくれ
面会を控えてくれた
泣きたかった
おかげで
気の済むまで
泣いた
日曜日の午後
かなでは
久しぶりに
お世話をしに来てくれた
ちょっぴり
お腹が大きくなった気がする
名前を既に決めてるらしい
尋ねても
教えてくれない
独りにして欲しい
理由を教えなかった
腹いせらしい
そんな彼女は
少し雰囲気が変わった気がする
ルーベンスの聖母のように
妊婦には
ふとしたときに
穏やかさの内の
力強さを感じる
慈愛とは
きっと
こういうものなのかもと
思う
母親になる妹に
わたしが子供の頃から
求めていた愛が宿っている
そう確信したわたしは
かなでが帰ってから
公正証書に
サインと押印をした
わたしと妹の名を付けてくれた
おじいちゃまから
譲り受けたものを
お腹の子に
引き継ぐために
窓の外は
木枯らしが
容赦なく吹きつけ
鮮やかだった葉から
生気を奪い去り
冬の到来を知らせる
今日から
大通公園で
ミュンヘン・クリスマス市が
通常開催されたらしい
次
おとうさんが来たら
クリスマスカードを
ねだってみよう