11月22日

おかあさんから

手紙が来た

 

カフェでの事を

謝る内容だった

 

でも

わたしの中に

入ってこない

 

意味は解るのだけれど

まるで

文字が

記号のようで

 

パラパラと

便箋から

溢れてゆき

真っ白になっていくみたいだ

 

バースデーで

一時帰宅して以来

できるだけ

独りにして欲しいと

わがままを言った

 

かなでは

理由を聴こうとする

 

でも

おとうさんは理解してくれ

面会を控えてくれた

 

泣きたかった

 

おかげで

気の済むまで

泣いた

 

日曜日の午後

 

かなでは

久しぶりに

お世話をしに来てくれた

 

ちょっぴり

お腹が大きくなった気がする

 

名前を既に決めてるらしい

 

尋ねても

教えてくれない

 

独りにして欲しい

理由を教えなかった

腹いせらしい

 

そんな彼女は

少し雰囲気が変わった気がする

 

ルーベンスの聖母のように

 

妊婦には

ふとしたときに

穏やかさの内の

力強さを感じる

 

慈愛とは

きっと

こういうものなのかもと

思う

 

母親になる妹に

わたしが子供の頃から

求めていた愛が宿っている

 

そう確信したわたしは

かなでが帰ってから

公正証書

サインと押印をした

 

わたしと妹の名を付けてくれた

おじいちゃまから

譲り受けたものを

お腹の子に

引き継ぐために

 

窓の外は

木枯らしが

容赦なく吹きつけ

 

鮮やかだった葉から

生気を奪い去り

冬の到来を知らせる

 

今日から

大通公園

ミュンヘン・クリスマス市が

通常開催されたらしい

 

おとうさんが来たら

クリスマスカードを

ねだってみよう