ルーベンス②

家でも学校でも

ひとりで過ごす事が

普通だった

 

たまに声を出すと

周りから驚かれた

 

「すまして

 お高くとまってる」って

 

嫌味を言われることもある

 

「あの子 

 口がきけないみたいよ」って

 

変なウワサもされたりした

 

そんな周りと

仲良くするより

 

ひとりの方が

はるかに良かった

 

だから彼から

「誰かのお見舞い?」なんて

 

声をかけられた事に

驚いてしまって

 

抑揚のない声で

『定期的な診察の日よ』って

 

そう答えて

少し離れたイスに座った

 

"ぶっきらぼう過ぎたかな?"

 

恐る恐る

目線を上げると

こちらを見てニコっとする

 

なんだか

すごく恥ずかしくて

 

彼が

診察室に呼ばれるまで

 

ずっと

下を向いていたんだ

 

おウチに帰るまで

ドキドキしてた

 

次の日から

 

彼は毎日

声をかけてくる様になった

こちらを見てニコっとする

 

ごきげんよう』って

 

そう言ったきり

上手に笑えない

わたしは

 

なぜドキドキしてるか

わからないまま

 

ただ

悟られない様に

 

目を逸らすのが

精一杯だった