のらねこ②

子どもの時読んだ

ルドルフとイッパイアッテナ」みたいに

"お月さん"もいたるところで名前があった

"ぶち"だの"チロ"だの"マル"だの

 

でも

どこにいても変わらないのは

気高さだ

正直に"自分"を生きているようで

羨ましかった

それから

2ヶ月程が過ぎたころ

講義を受けていたときに
左目の見え方がおかしいことに気づいた

でも
その頃はよく遅くまで読書しており

その上 頭痛もあったことから
眼精疲労かなって思ったり

身体の倦怠感はきっと生理が近いからと

思っていた

まさか
次の日から急に立てなくなるなんて
思っても見なかった

幸い
と言って良いのか

大学には附属の病院があり
そこで診てもらうことにした

その時のわたしは
『ただの疲労ですね』程度と

高を括っていた

両親を呼ぶように言われた時
『ただの疲労じゃない』って悟った

とにかく親に知られたくなかったので
自分が成人していることを盾に
わたしだけで聞くことにした

わたしの中で起きているコト

多発性硬化症

わたしにつけられた病名

難病指定されており
今のところ根治寛解の方法はない

神経は
まるで電線のように被覆されており
通常は被覆が壊れて
神経部分が露出することはないが

その被覆が
何らかの理由で破れ
神経が剥き出しになることで

手指



視力
嗅覚
聴覚
言語
記憶
五臓六腑

機能がダウンしてしまう

それがわたしの身体で起きている
そして発症と回復を繰り返して
悪くなっていく

ちゃんと腑に落とすまでに
なんども反芻したけれど

すればするほど

行く先の暗さが深まるだけだった

一体
わたしは何をしたんだろう?

やっと
ひとりの自由を手にしたのに

今度は
自分自身に怯えて暮らすことになるの?

わたしは何のために生きているんだろう?

そんなことばかりが
頭の中をぐるぐる駆け巡るばかり日々

そうして
お部屋に帰ることができたのは
2週間後

わたしは
カラッポになっていた

わたしは
期待はずれな子だから
最初からカラッポだったんだと
なんだか妙に納得できた