卒業まではあっという間だった
何の興味もないテーマの卒論を
然も真剣に取り組んだように
作り上げる
そして
ただ実家から離れたくて
居場所を
遠いところに探した
北海道に決まって
いよいよ
するコトが無くなった頃
同じゼミの子から
飲み会に誘われる
"最後くらいいいか"
参加するコトを伝えると
ものすごく驚かれた
その夜
誰とどこのお店に行ったのか
何も覚えていないけど
ただ
安い盛り上がりと
変な連帯感から逃れたくて
その
ひとかたまりから離れた
だけど
帰りのコトだけは
ハッキリ覚えてる
"お月さん"に逢えたから
うれしかった半面
なんだか
恥ずかしかった
街灯の下
その光が及ぶか否かの
冷たいアスファルトに
3本足のあの子
その姿が美しくて
何より高潔に思えた
いじけたわたしとは
比べ物にならないくらい
誇り高く生きている
今を
ただ生きている
そう感じた
きっと
この子には
毛や目の色も柄も
ましてや
足がひとつ足りない
ハンディキャップも
大した問題じゃないんだろう
しばらくして闇に溶け込むように
行ってしまった
わたしが"お月さん"を見たのは
それが最後だった
東京を離れる日まで
ずっと考えていた
何にも囚われない
のらねこのこと
そして
わたしのこと
のらねこになりたい
笑われるかもしれないけど
素直にそう思う
自分のことだけに
振り回されない
溺れない自分でいたい
そんなことを思ったわたしも
北の街に来て5年が経とうとしてる
生きることくらい
誠実でありたい
そんな憧れを持ち
"のらねこ"として過ごしている