のらねこ④

卒業まではあっという間だった

 

何の興味もないテーマの卒論を

然も真剣に取り組んだように

作り上げる

 

そして

ただ実家から離れたくて

居場所を

遠いところに探した

 

北海道に決まって

いよいよ

するコトが無くなった頃

同じゼミの子から

飲み会に誘われる

 

"最後くらいいいか"

 

参加するコトを伝えると

ものすごく驚かれた

 

その夜

誰とどこのお店に行ったのか

何も覚えていないけど

 

ただ

安い盛り上がりと

変な連帯感から逃れたくて

その

ひとかたまりから離れた

 

だけど

帰りのコトだけは

ハッキリ覚えてる

 

"お月さん"に逢えたから

 

うれしかった半面

なんだか

恥ずかしかった

 

街灯の下

その光が及ぶか否かの

冷たいアスファルト

3本足のあの子

 

その姿が美しくて

何より高潔に思えた

 

いじけたわたしとは

比べ物にならないくらい

誇り高く生きている

今を

ただ生きている

そう感じた

 

きっと

この子には

毛や目の色も柄も

ましてや

足がひとつ足りない

ハンディキャップも

大した問題じゃないんだろう

 

しばらくして闇に溶け込むように

行ってしまった

 

わたしが"お月さん"を見たのは

それが最後だった

 

東京を離れる日まで

ずっと考えていた

何にも囚われない

のらねこのこと

そして

わたしのこと

 

のらねこになりたい

 

笑われるかもしれないけど

素直にそう思う

 

自分のことだけに

振り回されない

溺れない自分でいたい

 

そんなことを思ったわたしも

北の街に来て5年が経とうとしてる

 

生きることくらい

誠実でありたい

 

そんな憧れを持ち

"のらねこ"として過ごしている